”脳とタイヤが直結した感じ。精密なハンドリングをシングルトラックで実感しました。”

−− 主 宰 専門通信社 恒点観測員


今のバイクは、フルサスペンションとか、ディスクブレーキとかがついてて凄いですね。でも、なんか違和感を感じるんですよ。腰高な感じっていうか。BBハイトが高いし、ハンドル位置も高い。サスのストロークもたくさんあるので、なんか、自分が空を飛んでるような感じがしてたんです。ふわふわしてるっていうか、、、大地から離れてしまった、というか、、、それはそれで、一つの乗り方だと思うんですが、なんとなく不満でした。

田沢湖のシングルトラックは、まるでジェットコースターのように走れるトレイルで、私が一番好きなコースです。そこを走っているうち、こんなことを思うようになっていました。すごく軽量で取り回しがいいバイクがあれば、アプローチの登りも有利だし、シングルトラックの中ですごく走りやすいんだろうな、と。また、シングルトラックでは、フロントサスペンションも不要ではないか、、とも思いました。でも、今のバイクにはそういう条件を満たすものがなかったんです。今のバイクはほとんどフロント・サスペンションを装着することが前提となっているので、私の求めるものとジオメトリー自体がまったく違うと思います。

そんなとき、偶然手に入れたのが、クライン・アティチュードなんです。10年以上前のフレームをぼろぼろの状態で入手したんです。最初はあまりの傷みにずいぶんがっかりしたんですよ。でも、塗装しなおして、ドライブトレーンの部品も新しいものに交換してみました。バイクというのは、ある程度古いフレームでも、最新の部品をつけることができるんですね。このリストアには1年ほどかかりましたが、新品同様によみがえりました。

実際に乗ってみて思ったことなんですが、このバイクは、普通に平地の舗装路を乗っているときにはどうということない乗り味なんですよ。でも、シングルトラックでは、まったく印象が変わりますね。シングルトラック専用バイクといってもいいですよ。すごくスムーズなんです。リジッド・フォーク(ユニクライン)なんですが、けっこう衝撃を吸収します。極太の構造が役立っているのかもしれません。そして、自分の思ったラインを、まったく正確にトレースします。まるで、脳とタイヤが直結したように感じました。たぶん、フレームがすごく高い精度でつくられているためなんじゃないかと思います。そして、ミッション・コントロールシステム。アティチュードの素晴らしい操縦性には、このステアリングシステムが大きな役割を果たしていると思います。あと、シールド化されたヘッドとBBは雨のライドでも安心感があります。

よく、クラインは塗装や仕上げが美しい、ということもあって、床の間に置かれて大事にされているというイメージがあるんですが、とても残念ですね。すくなくともオールド・クラインはそんなバイクじゃない。このバイクに乗っていると、自分とバイク、そして自然とが一体化するような感じがします。オールド・クラインは、特殊規格でつくられたちょっと変なバイク。サスペンションやディスクブレーキなどの現代の流行とも無縁なバイクです。でも、このクラインは、シングルトラックのために作られたものだということをはっきり実感しました。

クラインは、シングルトラックで働き、シングルトラックで一生を終えるのがふさわしい、、、

たとえフレームがポッキリいってもね。



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