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 KLEIN   Attitude 1991 (KLEIN USA) リストア


#15 独自規格の検証


★今回は、クラインの独自規格を検証してみます。はたして、なにが独自なのか! どーゆーふうに独自なのか! を、ATTITUDEを例に調べてみます。


オールドクラインは、普通のバイクとは異なるアプローチで構成されてますな。それは、独自規格。他のバイクと互換性がない部分があるのです。

他と違うということは、非常に貴重な存在だったということだ。バイクの歴史において、まさに唯一無二。

四角い孔に丸い杭を打ち込み、ルールにとらわれず、前例を踏襲しない、、、 ←このリンク、ちょっと容量が多いので注意!

現行モデルではこうした独自規格は失われました。

とはいえこのクラインのアプローチは、バイクの世界を少し変えたと思います。それはファットチューブであり、インテグレーテッド・ヘッドセットであり、カートリッジ式BBであったのだった。

では、クラインが開発した独自規格とは、、、


MC-1(ミッションコントロール1型)

 独自規格の真骨頂。ハンドルバーとステムを溶接してある。この構造の利点は、軽量であることと、たわみの許容量が大きいこと、美しいこと。欠点はライディングポジションの自由度が少ないこと。


内蔵式ヘッドセット

 もっとも先進性を感じる部分です。ヘッドセットを完全にヘッドチューブ内に内蔵してあります。形式としてはスレッド(臼)ヘッドセットなんですけど、普通のスレッドヘッドとはまったく規格が違います。さらに、上端と下端にラバー(ゴム)製のシールドが付いていて、泥や水の侵入を防ぐ措置がとられています。写真で黒く見える部分がラバーシールドです。

 マウンテンバイクは、ロードバイクとは行動環境が全く異なるのだから、構造も全く異なるべきだという、とても論理的な問題解決方法です。

 とにかく、ヘッドチューブ、太いです!

豆知識:エアヘッドセットと呼ばれるようになったのは94年のスレッドレス類似方式に変更されてからです。


内蔵ケーブルルーティング

 トップチューブにリアブレーキケーブルを内蔵し、ダウンチューブにはフロント・リアの両ディレーラーケーブルを内蔵しています。こうした内蔵の利点としては、

      @摩擦の少ない直線的なケーブルルートを確保できること
      A泥からインナーケーブルを守ることができること
      B担ぎのときにケーブルが体に負担をかけないこと
      (チューブの下にケーブルがあると肩に当たって痛いんです)
      C外装式で必須の、破損しやすいアウター受けが不要なこと

 とくにマウンテンバイクで有効な構造かな。事実、クラインでも90年頃、マウンテンバイクから導入されていきました。意外なことに、ロードバイクに導入されたのは94年ころです。


圧入式ボトムブラケット(BB)

 ねじ切りでなく、圧入。 特殊工具で押し込んであるのです。また、シールド化されており、メンテナンスフリー。それはいいんですが、最新式のクランクに対応しにくいです、、、主宰のATTITUDEではチューニングメーカー【AND】の力を借り、その問題を解決しました。おっと、ドイツのメーカー【Reset】の力を借りても解決可能ですよ。


独自形状チェーンステイ

 チェーンステイBB付近側は角断面ですが、リアエンドに向かうにつれ次第に楕円断面に変化します。強靱で、かつ太いタイヤを許容します。91年モデルでも2.35インチといった太いタイヤを余裕を持ってはめることが出来ます。


ホリゾンタルドロップアウト

 ホイールを後方から抜く方式です。クラインはホイールを素早くはめることが出来ると主張していますが、どーなんでしょうか、、、慣れですね。

無垢の8mm厚のアルミ板で出来ているので、すごく丈夫です。

クラインの主張によれば、トルクをかけるとハブ軸がドロップアウトの前輪側端に押しつけられ、結果的にバイクを前方に進めるといいます。ホントか、、?

豆知識:94年モデルからはさらに小型のマイクロドロップアウトという規格に変更されました。


その他

上の図には書かなかったんですが、UNIkleinフォーク、すごく太いです。

クラウンの肩の部分の一番太いところで、44mmもあるんです。ちなみに97年式JUDYは、ブレースの付け根の一番太い部分で41mm。はあ、、、すごっ!

おなじリジッドのキャノンデールFATTYフォークも、相当太そうですな。いつか比較してみたいです。


全体像

 まったく他のマウンテンバイクとは成り立ちが異なると言う印象を受けます。これは、まったくの空白から、バイクという乗り物を再構成した結果なんでしょうな。

既成概念を無視して、シングルトラック、泥や激坂といった環境を含む【山】を走るバイクを造ろうすると、こんなバイクができるということではないだろうか。


★今日のまとめ

「たとえそれが独善といわれようと、理論的に最適化されたものは、万人にとっても最良のものなのだ」

、、、ゲーリー・クラインはこう思っていたんじゃないでしょうか。いや、まったく主宰の想像なんですが。

そうでなければコストを度外視し、精密なロケットモーターを作るようにバイクを作るなんてことはできないに違いない。

それはクレイジーだが、ある種、天才の仕事ですな。

 独自企画を提案することでバイクの世界を変えたクラインが挫折したのは本当に残念だ、、、TREKに吸収後は、独自規格をほとんど放棄してしまい、現在に至っています。それは企業が巨大化し、カスタマーの増大に対処するために部品や製法を簡素化してコストダウンしていく姿そのものです。

それは、きっとゲーリー・クラインにとっては究極の選択だったんでしょう。良し悪しは別にして、、、


つづく!

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