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クラインの特許


KLEIN(クライン)のバイクに使われている特許について解説します


みなさんのクラインバイクには、こんなステッカーが貼ってあるんじゃないかな。たとえば、2000年型クアンタムにはダウンチューブの下に貼ってあります。

これは、ゲイリー・クラインが持つ米国の特許ナンバーなんです。このクアンタムには17の特許のうちいくつかが使われていることを示してますな。

「クラインはたくさんの特許をもっている」とはよく聞くんですけど、どういう特許なのかは今まで知りませんでしたなー。

パテントの中身を知る方法なんですが、合衆国特許商標庁(USPTO)のサイトに行けば簡単です。

ここのパテント・ナンバー・サーチのページを開くわけですな。で、パテントナンバーを打ち込む。これだけです。本文はテキストで表示されますし、もし、図の情報が欲しければ、テキストページの上の方にある[image]ボタンを押せば、画像が表示されます。あとは左のフレームに表示されるナビゲーションバーを使って、画像ページをめくります。

この方法で、調査をしてみました。


(1) U.S. Patent Number 4500103

「高効率バイクフレーム」(Filed:November 7, 1977)February 19, 1985

バイクのボトムブラケットを固定し、リアエンドに加重することによりねじれ剛性を計測するなどの手法を用い、より効率的なフレームを製作したことについて

強度計測法については、ゲイリー・クラインが、98年カタログの中などで言及してます。実験による検証手法は、自然科学の基礎的な原則ですな。理論的に最適化する、、、科学的だ。


(2) U.S. Patent Number 4621827

「改良チェーンステイを持つ軽量バイクの構造と理論」(Filed:February 2, 1984) November 11, 1986

左右のチェーンステイの外回りの形状は等しいまま、左右の肉厚を変えることで剛性と疲労強度を向上させ、軽量なバイクを製作したことについて

チェーンステイ内部の肉厚を、非チェーンサイドを少なくとも10%薄くするという手法により、軽量化・剛性・疲労強度の3つを両立させたものです。


(3) U.S. Patent Number 5002297

「大径リジッドフォークとステアリングアッセンブリー」(Filed:September 27, 1989) March 26, 1991

大径のアルミを用いて製作されたフォークと全く新しいステアリングシステムについて

ミッション・コントロール1型と、89年と90年モデルに使用されたボックスクラウン型フォークの構造を示したものです。これこそ、MC−1の出発点なんですな。MC−1の図が出てきたは感動しました。

(補足:ボックスクラウンは91年からUNIkleinに改良されました。)


(4) U.S. Patent Number 4960402

「チェーンラップ防止デバイス」(Filed:September 27, 1989)October 2, 1990

チェーンステイ裏のボトムブラケット端に装着する、枝分かれした形状のチェーンラップ防止金具について

チェーンラップ(チェーンサック)防止デバイスは、現在でもクラインのマウンテンバイクには装着されていますね。このデバイスはとても有効です。チェーンサック防止ももちろんですが、フレームを壊さないためにも必要な金具です。複雑な形状をしているのはチェーンサック防止策を最適化した結果です。


(5) U.S. Patent Number 5018758

「高効率バイク」(Filed:October 23, 1986) May 28, 1991

大径アルミニウム合金チューブを用いて製作された、強く、軽く、剛性の高いバイクについて

この特徴はクラインそのものですね。でも、特許取得は90年代になってからなんですなー。意外。


(6) U.S. Patent Number 5273301

「フォークとステアリングアッセンブリー」(Filed:May 22, 1992) December 28, 1993

大径アルミニウム合金チューブを用いて製作された、フォークとステアリングシステムについて

(3)ではじめて示されたMC−1と、ボックスクラウン型フォークをリファインしたもの。フォークの溶接手法などが細かく示されています。


(7) U.S. Patent Number 5364115

「ドロップアウトとその接合部」(Filed:August 13, 1993)November 15, 1994

カーボンで補強したチューブで製作した競技用バイクのドロップアウト(エンド)の形状と接合方法

衝撃耐性と疲労耐性に優れたフロントとリアエンドの形状と、本体チューブへの接合方法を示したものですが、これがおなじみ「マイクロドロップアウト」のことです。この項には、接合には接着手法と溶接手法などを併用して行う、とあります。


(8) U.S. Patent Number 5377734

「モーターサイクル・自転車用の高効率全地形型タイヤ」(Filed:December 13, 1991)January 3, 1995

低回転重量をもち、様々な路面状況に対応したタイヤについて

これはクライン・デスグリップタイヤのことですな。90年代前半にクラインの完成車に採用されていたタイヤです。しかし、10年のギャップを経て、2003年モデルにリバイバルしました。トレッドのブロックを適正に配置し、重量が効率的に移動するようにしているとのこと。このタイヤ、2003年以降も小売りもするのでしょうかね。もしばら売りで買えるなら一度試してみたいものです。

しかし、この特許はモーターサイクル用としても取得されていたんですなー。意外。


(9) U.S. Patent Number 5377731

「狭いひき目幅をもったノコギリの歯について」(Filed:January 3, 1995 December 15, 1993

これは番号の書き間違いでしょう。自転車とはほとんど関係ない、回転ノコギリの歯が出てきました。ちなみにこの特許を持っている人はWildey; Allan J. (Paris, CA) という方で、もちろんクラインの関係者ではありません。たまには間違いも面白いもんですなー。


(10) U.S. Patent Number 5405159

「高効率自転車サスペンション」(Filed:June 30, 1994)April 11, 1995

回転式ダンパーと複合材スプリングをもったバイクについて

フルサスバイクのことかな?と思ったら違った。ミッションコントロール・ステム&バーに、サスペンション機能を取り入れた「スマートバー」です。このころはソフトライドという会社が同様のステム・サスペンションを製作していましたな。発想は似ていますが、内部はだいぶ異なる様子。だいぶ手間をかけて取得した特許ですが、スマートバーの生産は2年くらいで終わってしまいました。


(11) U.S. Patent Number 5207619

「調整可能な小型チェーンラップ防止デバイス」(Filed:April 9, 1992)May 4, 1993

改良版のチェーンラップ防止デバイス。

形状を改変し、チェーンラップ防止効率を向上させました。


(12) U.S. Patent Number 5470091

「フレーム強度を強化するケーブルガイド」(Filed:July 31, 1992)November 28, 1995

ディンプル形状の、インターナルケーブルルートの出口がフレームを強化することなどについて

これはクライン自慢のフレーム形状ですね。フレームに穴をあけることにより、意図的に「弱い」部分をつくることでフレームの他の部分を強化するということらしい。


(13) U.S. Patent Number 5499864

「自転車用リム」(Filed:June 16, 1993)March 19, 1996

対衝撃性と対疲労性に優れたアルミ合金製の自転車用リムについて

リム断面に、トラス(ハシゴ状)形状を持つ革新的なリムだそうです。商品化はされていない、、、と思う。


(14) U.S. Patent Number 5517878

「自転車のハンドルバーと、ステアリングコラム固定用器具」(Filed:August 13, 1993)May 21, 1996

MC−2とエアヘッドについて

ようやく登場。MC−1の改良版、、、というより、アヘッドシステムから着想したクライン独自のアヘッド的システム。ここで注目したのは、図3ではハンドルとステムが溶接されているのに対し、図2はクランプ式のハンドル固定方式になっているところです。図3はMTB、図2はロードバイク用のものとされていますね。ロードバイクのハンドルバーまでは、さすがに溶接構造にはできなかったようで、実際の製品にもこのとおりに反映されています。


(15) U.S. Patent Number 5557982

「コンポジット・ハンドルバー」(Filed:March 30, 1995)September 24, 1996

Klein Stratumハンドルバーのこと。

マウンテンバイク用Stratumバー。タテ方向には低係数のカーボンファイバーを、ヨコ方向には高係数のカーボンファイバーを用いることで、従来型のカーボンクロスを幾重にも重ねる方式よりも格段の軽量化を実現しました。実際、Stratumの最終型の重量は90gという超軽量でした。ちなみにエンドバーが付いたタイプのStratumは180g。これでも相当軽量ですな。


(16) U.S. Patent Number 5692764

「自転車用フロントフォークとその製造方式」(Filed:August 13, 1993)December 2, 1997

(3)、(6)の改良版のフォーク。

さらに改良を進め、軽量化と剛性を向上させたSTRATAフォークのことと思われます。ボロン、カーボンファイバーを製造工程で付加することから、そう判断しました。


(17) U.S. Patent Number 5586780

「自転車用高効率サスペンション」(Filed:September 28, 1994)December 24, 1996

回転式ダンパーと複合材スプリングを採用した、(10)の改良版スマートバー。

さらに改良を進めたスマートバー。実物をみたことないので、実際に流通したのが改良前なのか改良後なのか不明ですが、特許申請時が1994年。スマートバーは93年頃までしか発売されていません。このことから、市販されたスマートバーは、改良前のものであった可能性が強いでしょうな。


  • まとめ

こうしてみるとけっこう製品化が頓挫したものもありますねー。スマートバーなんて相当気合いを入れて作ったのに、いっこうに省みられることはない。

では、クラインの特許は全て過去のものなのか、と言えばそうでもない。Stratumハンドルバーは現在でも最軽量級の90gだし、Death Grip タイヤは2003年モデルから復活しました。チェーンラップ防止金具も、MTBラインには標準で装着されている。

気になるのは97年以降の特許。

PAT. NO. Title
1 6,109,636 High efficiency bicycle frame suspension
2 5,944,932 Bicycle front forks and methods of making same
3 D412,868  Downstrut for the swing arm of a suspension bicycle
4 5,906,385 Adjustable bicycle dropout
5 5,826,899 High performance suspension bicycle frameset

とあるんですけど、ほとんどがマントラ関係の特許ですな。この解説はおいおいやっていきたいと思います。

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