オールド・クラインの定義


最近、見直されつつあるオールド・クライン。しかし、どのモデルがオールド・クラインなの?という疑問があるのもまた事実。 ここでは、年表を元に、オールド・クラインとはなにか、について考察してみます。


クラインの買収前後の年表と、モデル名、発表された技術を一覧できる図を作ってみました。

→ 図

PDF形式のものも用意してありますので、ご活用ください。

ダウンロードはこちら。→ Old Klein Definition 

この図によれば、明らかにトレックの買収があった96年モデル(正確には95年10月)から、バイクの内容が変化していることがわかります。

ただし、同時に、トレック買収後も、96年モデルまでは買収以前に開発されたモデルが内容を変えずに販売されていることもわかります。 例えば、96年のアティチュードやアドロイト、パルスIIなどがそうです。このことから、単純に、トレック買収以前だけをもってオールド・クラインとすることはできません。

そこで、トレック買収以前に開発されたモデルと、買収以後に開発されたモデルとを明確に分ける技術的な指標が、画期に使えないかと探してみました。

技術的指標としては、比較的長く継続した規格であるMC、ドロップアウト形式、クライン・プレシジョンBBなどが考えられます。 そこで、もっとも適当と思われるのは、クライン・プレシジョンBBです。

クライン・プレシジョンBBには、次のような特徴があります。

まず、クライン・プレシジョンBBは、83年にマウンテンクラインが開発されたころから装着されていたこと。つぎに、他の独自規格が改良を重ねていくのに対し、クライン・プレシジョンBBは登場当初からほとんど構造を変えずに、その消滅まで存続したこと。 そして、トレックによる買収のあと、新たに開発されたモデル(新パルス、新マントラ)には採用されていないこと。

これらの特徴により、クライン・プレシジョンBBは、他の技術的指標よりも、96年にバイクの内容が変化する以前のバイク群をよりよく代表することがわかります。

このことから、喧噪社サイトでは、次のように定義したい。


「オールド・クラインとは、クライン・プレシジョンBBが装着されていたバイクである」

考察

クライン・プレシジョンBBは、確かに優れたものであったが、同時にその後のクラインの発展を阻んだことは明らかだ。

それは、メンテナンスフリーの恩恵をユーザーにもたらす代わりに、ユーザーが自分で交換できない取扱の難しさや、シマノの新規格オクタリンクに対応しないことなどの致命的デメリットをもたらしたと思う。おそらく、ジップグリップのリコールと同様に、確実にクライン衰退の原因だったのであろう。

年表を見るとわかるが、クラインの衰退は、まさにこのクライン自慢のBBの消長と軌を一にしている。 ゲイリー・クラインがクライン・プレシジョンBBに固執し、放棄が遅れたことがさらに傷を深くしたと言えよう。

ゲイリー・クラインが考えたバイクの理想型とは、

(1) 軽量  (2) 最良の効果を狙った規格  (3) 軍馬のような頑健さ・メンテナンスフリー

この3つだった。そして、この理想型は、山で働くバイクである限り、時代に左右されず、普遍的なものではないか。

だが、現代のバイクでは、乗り方が著しく変わった。フル・サスペンションや、ロングストロークのフロントサスペンションによる、魔法の絨毯に乗ったようなライディングが主流になっている。

そのため、重量も増加し、ハンドリングもダルになった。(それが安全性につながっていることは否定しないが) ディスクやフルサスは、メンテナンスに手間をとらせる代わりに強烈な効果をもたらした。(自然に対するインパクト面でも)汎用規格の普及で、こうした「優れた」バイクを安価に生産できるようになった。

それは、すごくラクなことだ。そして、大部分のライダーは、そういった乗り方、そういったバイクを望んでいるのだろう。

しかし、私はそうではなく、もっと大地に近いバイクに乗りたいです。大地の鼓動を直接感じる、路面状況がダイレクトに体に伝わる、それに身体感覚で反応して対処していく、、、 オールド・クラインはそうした「古い」乗り方に合ったバイクだと思う。

他のバイクには見られないこれらの資質をもつバイクが、風雨にさらされたり、あるいは床の間に置かれたり、あるいは粗大ゴミとして捨てられたりするのは、すごく惜しいことですネ。


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