KLEIN定点観測

KLEIN(クライン)のバイクに関する様々な話題を紹介します。


以前の記事はこちらに移動しました。
   2006年のKLEIN定点観測
   2005年のKLEIN定点観測
   2004年のKLEIN定点観測
   2003年のKLEIN定点観測
   2002年のKLEIN定点観測
   2000年・2001年のKLEIN定点観測


2007/12/18
ワシントン州環境局リポート

 ワシントン州環境局がインターネット上で公表している「1993予算年度 対策強化レポート」には、このような記述があるので紹介しよう。

http://www.ecy.wa.gov/pubs/9420.pdf

Selected Case Examples

Klein Bicycle, Inc v Ecology

PCHB No. 92-174: On August 10, 1992 Klein Bicycle, Inc., a Chehalis based bicycle manufacturer was penalized $242,000 under state dangerous waste and water quality laws for illegally discharging wastewater and hazardous waste to the ground. The company was also cited for 15 hazardous waste violations including failure to properly designate and manage spent degreasers, solvents, cutting oil and paint thinner. The violations were observed during two inspections conducted in April and May 1992. The inspections found Klein had failed to voluntarily comply with state requirements despite technical assistance from Ecology and repeated efforts by the agency to gain compliance. Along with the penalty, an order was issued requiring Klein to cease discharging, waste to the ground and determine the extent and nature of any soil or groundwater contamination at the site. Klein was also ordered to manage its dangerous waste according to state law. The penalty and order were appealed but later settled. Included in the settlement agreement is Klein's promise to pay $50,000 towards programs or projects that benefit water quality locally or statewide. A$50,000 credit for innovative actions is also allowed for hazardouswaste management improvements at Klein's facility that are "above and beyond" federal, state or local requirements. Klein agreed to pay Ecology $40,000. Ecology suspended $50,000 of the original penalty contingent upon Klein's compliance with state hazardous waste and water quality laws during the next three years

【翻訳】

 1992年10月、クライン社は、排水と危険な廃棄物を違法に土中に排出し、ワシントン州の廃棄物・水質保全法に違反したため、242,000ドルの罰金を科せられた。同社は、ディグリーザー、溶剤、切削油、塗料薄め液などの取り扱い違反を含む15の廃棄物処理違反を犯していた。

 これら違反は1992年4、5月の調査により発覚した。この調査により、同社は州の環境局からの技術指導と、法的適合を求める当局のたび重なる努力にもかかわらず、自主的に州の要求基準に対応していなかったことも判明した。

 罰則によれば、クライン社に対し、土中への排出の停止と、工場敷地での地下水汚染の範囲を決定することが求められた。また、クライン社は州法により危険とされている廃棄物の処理を命ぜられた。この罰則と命令は公表されたが、後に一部猶予された。一部猶予規定によれば、クライン社は、地域・州全体の水質改善に関するプログラムに50,000ドルを支出することが約束された。そして、新たな具体的行動のために50,000ドルが求められたが、これについては、クラインの工場における廃棄物処理を、連邦・州及び地域の、さらに高い要求に対応したものに改善する用途とされた。

 クラインは環境局に40,000ドルを支払うことに同意した。環境局は、正規の罰金のうち今後3年間、クラインが廃棄物・水質保全に関する州法を遵守することを条件に、50,000ドルを猶予することとした。

【考察】

 このことから、クライン社は1992年以前、廃棄物の処理について重大な違反を犯し、そのために罰金を科せられたことがわかった。242,000ドルの罰金のうち、50,000ドルが猶予されたが、192,000ドルが必要だった。192,000ドルといえば、当時の為替レート1ドル127円(1992年11月)で計算すると、日本円にして2400万円あまり。これは小規模企業クライン社にとって、相当な負担となったことは間違いない。このため、1993年ころクライン社は多額の資金を必要としてただろう。

 これは、1994年のZip Gripのリコールと併せて、1995年の破綻に向けての有力な原因だったのではないだろうか。1993年から1995年にかけ、クライン社は非常な経営不安にさらされていたことが、今回の調査で判明した。

クラインは明解な思想に基づいたバイク製作で知られていた。しかし、1992年以前は、環境問題を軽視し、違法な排出を行っていたこともまた事実である。まさに光と影であろう。非常に残念なことだが、、、

 法令遵守は現代の企業経営には不可欠な要素である。個人企業からの成長途上にあったクラインは、こうした分野はまったく不備であったかもしれない。このことから、多額の罰金を背負うこととなった。そのため、経営資金を失ったクラインは、結局は大企業TREKの傘下となるほかはなかったのかもしれない。


2007/11/03
Trek Madone (2008)のテクノロジー

 Trek社の2008年型ロードバイク・Madoneが発表されていました。

 Madone2008は現代のバイクには珍しく、独自規格を満載しており、興味深いことにかつてのオールドクラインとの類似性がみられる。いくつかを紹介しよう。


(1)Fuselageの概念

(日本サイト)http://www.trekbikes.co.jp/madone/technology/integration/

(米国サイト)http://www.trekbikes.com/madone/technology/integration/

 まず、Madoneでは「フレーム&フォーク」の代わりにFuselageという言葉を使用している。これはありし日の独立企業Klein Bicycle Corporationが考案した概念であり、商標(TM)として扱われていた。フォークとフレームとを一体と見なして扱う、というものである。これは概念およびその呼び名がそのままMadoneでも使われている。


(2)汎用ベアリングを使用したBBシステム

(日本サイト)http://www.trekbikes.co.jp/madone/technology/efficiency/

(米国サイト)http://www.trekbikes.com/madone/technology/efficiency/

Klein Precision BBシステムは、アルミのBBシェルに直接、汎用のベアリングを圧入するのが特徴であった。しかし、現代のバイクは汎用スレッド付きBBシステムであり、クラインの手法は忘れられつつあった。しかし、今回のMadoneの場合、カーボン製のBBシェルに、スレッドなしで直接BBを圧入するというKlein Precision BBと同様の方法をとっている。いや、、、圧入というわけではなく、なんら専用工具を使わなくともぴったりベアリングがはまるソケットがフレームに用意されているとのことだ。(本当かよ、、、)

Hollowtech 2、X-type、MegaExoなどのほぼ共通規格の貫通式クランクシャフトが普及したことで汎用性を確保できたため、実用化できたと思われる。Klein Precision BBの現代的解釈といえるだろう。


(3)汎用ベアリングを使用したヘッドシステム

新しいMadoneのヘッドセットだが、汎用のベアリングを上下に入れてステアリングコラムを固定している点でKlein MC-1、 MC-2と類似している。これもBBと同様になんら専用工具を使わなくともぴったりベアリングがはまるソケット(プレシジョン・フィット・ソケット)がフレームに用意されているとのことである。これはMC-1をアヘッド化したような形状であり、MC-1の現代的解釈といえるのではないか。


【考察】

オールドクラインと2008年式Madoneとが、20年近くの時を経ているにもかかわらずフレーム(Fuselage)の根幹となる部分の構造は類似しているという事実。材質には6061T、OCLVカーボンという違いはあるものの、非常に興味深い。

 こうしたテクノロジーを復活させたのは、Trekがウェブサイトに書いてあるとおり、軽量化が主目的なのだろう。ゲイリー・クラインの手法が正しいものだったことが皮肉にも20年を経て証明されたということなのだろうか。、、、、そう思いたい。

 さて、カーボンフレームにおいて「ぴったりベアリングがはまるソケット」が存在できるかについては勉強不足のため、わからない。接着剤を併用していないようだが、、、負荷によりソケットが広がったりして空転するようになったりしないのだろうか。すごいテクノロジーだ。

 その他にも2008年式Madoneでは、フォークに埋め込んだスピードセンサーやリアブレーキワイヤーのフレーム内蔵などの技術が採用されているが、これらについてはこの稿ではこれ以上触れる必要はないだろう。


2007/10/22
チェーン・コントロール・デバイス(CCD)の研究

先日、オークションにてチェーン・コントロール・デバイス(CCD)を入手した。Fervor(1995)のCCDが長年の使用で傷んでしまったので、交換するためである。

CCDとは、クラインのMTBに装着されていたチェーンサック(噛み込み)防止金具なのだ。チェーンサックによりフレームが破損する事態への対策として、このデバイスを開発したのだろう。アルミは鉄にくらべ強度が低いので、チェーンサックは命取りになりかねない。クラインはアルミバイクのパイオニアであったので、こうしたトラブルにも積極的に対応していかなければならなかった。なお、このデバイスは米国特許 U.S. Patent Number 4960402およびU.S. Patent Number 5207619が登録されている。

http://homepage.mac.com/kensosha/kensosha/documents/patents.html

今回落札したCCDは、以前入手したAttitude(1992)に付いていたCCDと同じ形状である。しかし、Fervorに付いていたCCDの形状とは大きく異なったものだ。さらに、インターネットリソースやカタログなどのテキストによれば、これら2種とは別の形状のCCDも存在していたようである。

この稿では、これらCCDの形状の違いについて述べることにしよう。

1 タイポロジー

CCDには大きく分けて3形状がある。まず、今回入手したAタイプ。そして、Fervorに付いていたBタイプの2種がある。

右側の大きい方がAタイプ、左側がBタイプ

Aタイプ、Bタイプともにドライブサイドのチェーンステイに、2本のボルトで装着するものである。AタイプはBタイプよりも相当大きい。Aタイプには本体にリアディレーラーワイヤーのガイド穴が空いているが、Bタイプは別のパーツになっている。なお、Aタイプ、Bタイプの取り付け穴には互換性がある。

そして、現物が主宰の手元にないのであるが、CタイプというべきCCDがある。

Cタイプ (KLEIN Pre 97 Tech Manual より)

これは左右両方のチェーンステイに装着用のボルト穴が開いているタイプで、Aタイプ、Bタイプの取り付け穴とは互換性がない。


2 歴史

まず、CCDが最初にカタログに現れたのは1990年モデルのことだ。これはAタイプである。

Aタイプ (90年モデルカタログ より)

http://www.wundel.com/classic1.htmlに掲載されたFrank Wedekind/ WundelAttitude von 1992、Ichello Pinnacle von 1993でもAタイプが確認できる。

次にBタイプのCCDであるが、1994年カタログにおけるFervorの写真で確認できる。また、http://www.wundel.com/classic1.htmlのRalf Hartmann Pinnacle von 1994にはBタイプのCCDが確認できる。また、http://www.wundel.com/のCarsten BuekerAttitude MC 2 Prototype von 1993/ 1994の写真によれば、1993年のプロトタイプモデルのMC-2 AttitudeでBタイプのCCDが確認できる。

そしてCタイプであるが、http://www.wundel.com/のChristian Seeleke Pulse von 1994でCタイプのCCDが確認できる。また、http://www.wundel.com/のFrank Wedekind/ Wundel Attitude von 1994およびJakob Hjorth JensenAttitude von 1994ではCタイプのCCDが確認できる。また、96年のカタログにも掲載されている。

さて、特許であるが、米国特許庁のimageページで図を参照することができた。U.S. Patent Number 4960402(September 27, 1989出願)のものはAタイプの形状であり、U.S. Patent Number 5207619(April 9, 1992出願)のものはBタイプのものである。Cタイプの形状のものはクラインの持つ特許の図には見られない。

これらにより、CCDの変遷はおおむね Aタイプ → Bタイプ → Cタイプという流れで行われたと考えられる。画期の時期は、Aタイプ(90年ころ) → Bタイプ(93年ころ) → Cタイプ(94年ころ)とすべきだろう。

なお、KLEIN Pre 97 Tech Manualによれば、89年以前のバイクフレームにAタイプまたはBタイプのCCD用の穴をあけるレトロフィットプログラム用の専用治具が用意されていたとの記述があることを付け加えておこう。


【考察】

これらから推察されることは次のとおりである。

89年にクラインは最初のCCDとしてAタイプを開発し、90年カタログに搭載した。これは90年モデルとして開発されたAttitude(MC-1)やRascalなどの角形チェーンステイに対応したものであったのだろう。

その後、クラインは92年頃、Aタイプを小型化・改良したBタイプのCCDを開発し、93年頃から角形チェーンステイのバイクに搭載し始めたと思われる。

94年には、MC-2バイクおよび新規開発されたPulseの持つ丸形チェーンステイ用に、新たなCタイプのCCDを開発したのだろう。

このとき併売していた角形チェーンステイバイク(Fervor、Pinnacle、Adept (hybrid))には従来通りのBタイプのCCDを搭載していた。その後、96年以降はすべてのMTBにCタイプのCCDを搭載し、2002年モデルまで存続したということだろう。


2007/08/27

ワシントンのうわさ

mtbrのフォーラムの

http://forums.mtbr.com/showthread.php?t=321924

によれば、Kevin @ Byman's Bikesという人が、2007年8月中旬にこんな発言をしている。つい最近ですな。日本でいえば、お盆の頃だ。

(引用)

As far as Gary Klein starting his own company again, we hear lots of rumors being as our shop is based just 45 minutes from the original Klein location. It's been said that the new company will be Chehalis Bikes, however there is skepticism at our shop as it's likely that Trek has a contract with Mr. Klein which prevent him from starting another company or using his old technologies. Just thoughts/rumors and so fourth.

簡単に言うと、Chehalis近郊のバイクショップByman's Bikesでは、「ゲイリー・クラインが新たな会社を立ち上げるのでは、、、」という噂が流れているそうだ。

その場合、会社の名前はChehalis Bikesとなるという噂もあるそうだ。

しかし同時に、トレックとの契約により、クライン氏が別の企業を興すことや技術を使用することが禁じられているらしいので、その噂には疑念もある、ということだ。

ところで、同じスレッドで、「そうした独占契約事項は現在は一般的ではなく、あっても5年程度の期限付き」との意見も出されている。

【考察】

クライン氏はアーリー・リタイアメントしていると思ったので、これは意外な噂だ。実際には、2002年春に、シェヘイリスの機材類もぜんぶ売ってしまったようであり、実現性にはちょっと疑問符を付けざるを得ない、というのが現在の感想だ。

現在のところ、8月中旬に、ワシントン州ロングビュー周辺でこのような噂が流れていた、という事実がある、としか評価できない。

Kevin @ Byman's Bikes氏によれば、「ここ数か月でなにかがはっきり分かるわけでないと思う」「なにか判明すればmtbrの同スレッドに情報提供する」そうなので、気長に定点観測してみることにしたい。

(ところで、バイクショップByman's Bikesは実在し、スタッフにKevin 氏が含まれているようだ)

http://www.bymansbikes.com/modules/content/?id=3


拡大地図を表示


2007/07/16
シェヘイリスとは何だったのか まとめ完成
今年前半に連載していた「シェヘイリスとは何だったのか」を、別ページにまとめました。

http://homepage.mac.com/kensosha/kensosha/documents/whatischehalisfactory.html


2007/07/15
パロミノ廃止の背景:パシフィックとトレック・マーヴェリックの争い
2004年1月、パシフィックサイクル社と、マーヴェリックアメリカン社、トレックバイシクル社との間で特許係争が発生しました。その概要は次のとおりです。
http://www.singletrackworld.com/article.php?sid=1247
http://www.bicycleretailer.com/bicycleretailer/search/article_display.jsp?vnu_content_id=1000562065
【概要】
 2004年7月、マーヴェリックアメリカン社と、パシフィックサイクル社、トレックバイシクル社は、平和裡に、(2004年1月から係争中だった)特許侵害問題の解決をみた。
 この訴訟においては、パシフィックサイクル社は、マーヴェリックのML7と、トレックのクライン・パロミノが特許を侵害していると主張した。これに対し、トレックはパシフィック(GT)のもつi-DriveバイクがトレックのY字フレーム特許を侵害していると主張した。
その後、パシフィックが特許使用権をML7とパロミノにライセンスし、トレックもパシフィックに対し、Y字フレームの特許をライセンスすることに合意した。特許使用料や、そのほかの合意事項があったかどうかは公開されていない。
【解説】
 つまり、痛み分け。最初、パシフィックが特許侵害を訴えたが、逆に訴え返された格好ですな。
 パシフィックとの争いはこのように終結したのですが、この3ヶ月後に発表された2005年モデルのリストには、もはやパロミノの姿はありませんでした。(マーヴェリックのML7はその後も継続して販売された)
パロミノが廃止されたのは、これ以上の特許使用料の支払いをトレックがきらったからかもしれません。

2007/05/20
シェヘイリスとは何だったのか/その5

4−6 什器類
ロータブ製 24インチ回転台
製造会社不明 台 2台
製造会社不明 作業台 
製造会社不明 自転車用作業台
製造会社不明 自転車用修理・組立作業台 7台
製造会社不明 特製回転台(速度コントロール装置付)
製造会社不明 金属製台 16台
製造会社不明 調整式金属製棚ユニット 3台
製造会社不明 金属製棚ユニット 5台
製造会社不明 金属机 13台
製造会社不明 金属製大型机 2台
製造会社不明 金属製テーブル
製造会社不明 金属製仕事用テーブル
製造会社不明 折りたたみ式机
製造会社不明 金属製キャビネットなど 4台
製造会社不明 棚とキャビネットなど 2台
製造会社不明 2ドア式金属製キャビネット 13台
製造会社不明 6段チェスト
製造会社不明 金属製作業台 14台
製造会社不明 6ドア式木製キャビネット
製造会社不明 回転ラック 66台
製造会社不明 工具保持具付き作業台

4−7 工場内車輌
デーウー製 G25S 油圧フォークリフト(5,000ポンド プロパンガス駆動、サイドシフト式)

4−8 一般車輌
フォード製 2000年式 F150ピックアップトラック(6気筒・オートマチックトランスミッション)

4−9 車輌部品
製造会社不明 フォークリフト用ダンプ式ホッパー 3台
製造会社不明 フォーク延長キット

4−10 その他
机や台の上、壁に放置されていた種々雑多のなものがある、という記載がオークションリストに残っている。これらの内容については全く不明である。

5 まとめ
 シェヘイリス工場には建物・機材など、以上のような経営資源があった。クライン・バイシクル・コーポレーション社は、ゲイリー・クラインとダリル・ヴォスの指揮のもと、従業員達はこれらの機材を使用して、1980年から2002年始めまでのほぼ20年間に、さまざまなバイクを製作した。
 
 工場を除くこれらの経営資源は全て、トレックによるシェヘイリス工場閉鎖のあと、リアルエステート・オークションにより処分され、あるいは廃棄されたと思われるのだが、だれが落札し、そして、それらがその後、どのように使われたかについては現在のところ不明である。
 
 私たちは今、かつてのクライン・シェヘイリス工場がどのようなものであったかを知った。しかし、クライン以外の、倒産し、または巨大資本に飲み込まれていった無数の小規模自転車製造企業のことは、まだ誰も知らない。

(了)


2007/04/14
米国正規ディーラー発表

クラインの本国サイトで、米国内のディーラーが発表されていました。
http://www.kleinbikes.com/support/dealers.php
詳細は、次の通り。
アラスカ州      1軒
カリフォルニア州   1軒
イリノイ州      1軒
ニューハンプシャー州 1軒
ニューメキシコ州   3軒
ニューヨーク州    1軒
オハイオ州      2軒
オクラホマ州     2軒
米国内すべての州で、全部で12軒のみとなっています。
waybackmachineを使って過去のウェブサイトを調べたところ、
http://web.archive.org/web/20060412170650/http://www.kleinbikes.com/us/home.html
http://direct.where2getit.com/kleinbikes/geoproc.php/kleinbikes?menu=dealer_search.html&ADDR=&PLACE=chicago&STATE=il&RADIUS=200
2006年4月現在、イリノイ州シカゴ周辺50マイル内だけで8箇所あったディーラーで残っているのはVILLAGE CYCLE CENTERのみとなっています。
また、西海岸のディーラーはわずかに1軒のみ、MTBの本場コロラド州デンヴァーのディーラー数は8から0となっています。
このことから、米国内でのクラインの扱いは非常に限定的なものだということがわかるだろう。

2007/04/08
シェヘイリスとは何だったのか/その4

4 機材
シェヘイリス工場閉鎖後、オークションにかけられた機材は次のとおりである。オークションにかけられたもの以外にも、親会社のトレックがウィスコンシンに持ち帰ったり、、ゲイリー・クライン自身が未だに自己保有している機材がないとはいえないことに注意が必要である。以下に記載する機材類で、個数・単位を示していないものはすべて1個・台とカウントする。

4−1 工作機械
マキタ製 電動ドリル
バルドー製 120V 二連グラインダー 
ロックウェル製 6インチ ベルト式電動サンダー 2台
オスター製 #522 120V ネジ山切り機
テレシス製 TMP 6100 金属マーキング機
ユーロマ製 #FP24-120ネジ山切り機
パーカー製 空気圧式穿孔機
イナーパック(エナパック)製 空気圧・油圧式昇圧機
セルフィーダー製 二連空気圧式ドリル
ロールイン製 9インチ帯鋸盤(バンドソー)
ラシーン製 54440型油圧式裁断式弓鋸盤
旭東製 HT40502型 フォーク切断機(ねじ切り機付属)
ブリッジポート製 シリーズ1 垂直フライス盤と9x42インチ電源供給装置付き作業台 のセット
旭東製 #HT5921T油圧式作業台
シェヘイリス工場製 コントロール装置付き油圧プレス
ガードナー=デンバー(DGD)製 起重機付き10'X20'X12' 起重機台
ディスパッチ製 PSC3-39S ウォークイン恒温槽(フレーム熱処理機)(最大操作温度 華氏500度)及びラブセルフ製 制御装置(480V)
フェン製 NO. 2H 油圧式鍛造機及び制御装置
チュアンホン製 チューブ製造器及び制御装置
製造会社不明 万力
製造会社不明 120V 1連電動ドリル

4−2 溶接機械
ミラー製 シンクロウェーブ300溶接機及び300式電源増幅装置(バーナード製冷却装置付き)
ミラー製 CP5VS溶接機及び500式電源増幅装置(230/ 460 V)
ミラー製 ミラマチック 10A 溶接ワイヤ送給装置

4−3 塗装機材
ブルー・エム製 電気炉(華氏250度迄)
クリーンエア製 オーバーヘッド式ガス炉及びその制御装置と支持構造
ランダ製 ウォーターブレイズ(ガス式水分蒸発システム)
製造会社不明 塗装焼付機(8X8X8フィート 華氏600度) アシーナ・デジタルコントロール装置 440V 3PH
製造会社不明 5タンク(1タンク当たり360ガロン)式パウダーコート前処理用浸漬槽、金属製流出防止用部材、制御装置
製造会社不明 浸漬槽用フレーム運搬機及びラック、制御装置
製造会社不明 パウダーコーティング用焼付塗装機及び塗装用フック、制御装置

4−4 計測機械
デテクト製 100 LBX 0.5オンス デジタル計測器
ソニー製 ミルマン・デジタルDRO(電子式読み取り装置)
製造会社不明 計測用スタンド

4−5 備品類
スティール製 電動草刈機
パットン製 工業用扇風機
キニー製 吸引ポンプ
製造会社不明 ショッピングカート
製造会社不明 安全缶 3個
製造会社不明 箱運搬用台車 4台
製造会社不明 円筒運搬用台車 
製造会社不明 パレットジャッキ(手動フォークリフト)
製造会社不明 可燃金属用消火器(台車付き)
製造会社不明 凹型パレット 3個
製造会社不明 施錠ドア付安全カゴ
製造会社不明 マーリン電話システム(制御装置及び電話機(15台程度))
製造会社不明  36X48インチ 花崗岩製ブロック
製造会社不明 120V チェスト式冷凍庫 4台
製造会社不明 プラスティック製廃棄物タンク(非規格品)
製造会社不明 運搬カート 8台
製造会社不明 その他カート 2台

2007/03/11
シェヘイリスとは何だったのか/その3

3 工場建物

3−1 建家面積

建家面積は、トレックの広報担当者からの証言により、約50000平方フィート(約4600平方メートル)程度であったらしい。衛星写真から判断した場合でも、100m×50m程度の大きさの工場であったと思われ、面積的に符号する。たとえば日本では、これは町工場というレベルではなく、郊外の工業団地に立地されるような中規模の工場といえる。

http://terraserver-usa.com/image.aspx?T=1&S=10&Z=10&X=2574&Y=25767&W=1

(terraserver-usa 6/21/1990撮影)

3−2 構造

工場建家の基本構造は、内部の写真などから、鉄骨構造(軽量鉄骨の可能性もある)によるものと推測される。工場内部の写真から判断して、床はスラブ打ちと推測した。工場の建設時期は不明であるが、terraserver-usa.comの衛星写真撮影年月日が6/21/1990なので、1990年には既に最終状態の姿だった可能性が高い。また、平屋建てであり、屋根・壁面は波板鋼板張りである。屋根は切妻式であり、最高部分で16フィート(487センチ)、最低部分で13フィート(396センチ)である。

3−3 付帯設備

衛星写真によれば、工場建家の北側には渡り廊下で接続された事務所のような建家が見られる。このオフィス部分は2000平方フィートある。おそらく、ここでマーケティング・販売等などの事務が行われていたかもしれない。南側には100台分の駐車スペースがあり、従業員・来客用の駐車場としては十分であった。電源はPUD(Lewis County Public Utility District)=ルイス郡公益公社が三相480ボルトを供給した。また、下水は浄化槽で処理していた。

http://www.lcpud.org/

この工場は市街地から離れた森林のなかに位置し、周りをいくつかのジープロードやシングルトラックが囲んでいる。こうしたトレイルは、ゲイリー・クライン自身によるバイクの研究開発に使用されていたとされる。こうしたトレイルでの研究開発は、積雪が多くなるため走れない12月−3月をのぞき、日常的に行われていたと推測される。

インターネットリソースによれば、工場を見学したり取材に訪れた人々も、しばしばゲイリー・クラインにランチタイム・ライドなどに連れ出されたといわれている。

ttp://www.sidetrak.com/Japanese/shoji16.html

また、冷涼な気候から判断して、夏季の冷房設備はおそらく不要であっただろうが、冬季の暖房設備は必要であったろう。

なお、2007年現在、ルイス郡経済発展評議会が所有権を保有しており、この建物のリースによる貸し出しが可能となっている。

http://www.washingtonprospector.com/ed.asp?cmd=select&maxx=1176679.05128366&minx=1092175.46539633&miny=-164402.264319042&maxy=-http://www.washingtonprospector.com/ed.asp?cmd=select&maxx=1176679.05128366&minx=1092175.46539633&miny=-164402.264319042&maxy=-112665.375000263&vis=&nvis=&p=100&t=1&x1=&y1=&label=&city=CHEHALIS&zipcode=&thetype=all&minsize=0&maxsize=9999999999999&units=SqFt&selid=121258&report=&distance=&distance2=&distance3=&s=&sic=&parcel=&address=&forsale=no&forlease=no&railroad=&county=&k=0&add=&dd=999999&ddcity=&region=&thestate=&com=&groups=&thetype2=&variable=&selcounty=&rida=


2007/02/24

クラインウェブサイト更新

永遠に更新されないかと思っていたクラインのサイトが更新されていました。

http://www.kleinbikes.com/

米国での販売が再開されたかどうかは未確認です。ディーラー一覧がないことから、未再開と推測されます。

また、2007年カタログも同時に公開されていましたが、これは日本語がメインとなっています。Gary Kleinという名前が数か所に掲載されていました。

よって、「クラインの軌跡」の記述を変更します。

(旧)

 クラインのその後の運命を暗示していたかのように、米国版のカタログや米国版ウェブサイトには、2005年後半以降、Gary Kleinという創業者の名前は掲載されてはいない。

(新)

 →この文 削除


2007/02/09
シェヘイリスとは何だったのか/その2

1−2 気候

 シェヘイリスの属するセントラリア地域の平均気温は、米国平均を下回っている。1日の平均気温は1月は摂氏5度、7月は摂氏15度であり、夏はかなり冷涼である。

1月の日別最低気温は摂氏1.5度、日別最高気温は摂氏8.8度であり、7月の日別最低気温は摂氏11.5度、日別最高気温は摂氏27度である。

 降雪は10月から4月まで見られる。また、日照時間は米国平均をかなり下回っている。一年のうち、50%程度は雨、雪という天候となっているからである。降水量は5月から9月までは米国平均より少なく、10月から4月までは積雪のため極端に多い。風は弱く、穏やかな日が多い。日本と比較して、夏と冬の温度差は小さいため、日本の都市に類似した気候を求めることは出来ない。

 バイクに乗る環境としては冬は雪が多いため適していないが、それ以外の季節は比較的降水量が少なく、冷涼なためバイクライドには適していると言える。


2 雇用状況


2−1 従業員数

 シェヘイリス工場の従業員は最大雇用時点で80名、最終状態では60名程度が雇用されていた。

 つまり、この工場ではシェヘイリスの人口7000人の約1%が雇用されており、従業員の家族構成などを考慮すると、シェヘイリスの人口の2%から4%程度がこの工場に関係していたと推測される。このことから、工場の閉鎖はシェヘイリスの経済に大きな影響を与えたことは容易に想像できる。


2−2 従業員のエスニックグループ

 シェヘイリスの人口に占める人種構成は、86.2%をコーカソイド系、ヒスパニック系が7.9%、ネイティブアメリカンが2.4%、アフリカ系が1.3%を占めているとされている(http://www.city-data.com/city/Chehalis-Washington.html (2005) )ことから、仮にエスニックグループが、従業員に同様程度に反映されているとすると、最大雇用時点の従業員数80名において69名がコーカソイド系、6名がヒスパニック系、2名がネイティブアメリカン系、1名がアフリカ系、2名がアジア系を含めたその他のエスニックグループということとなる。

これらは単純計算による推測値であり、シェヘイリス工場の内部の様子を想像する助けとしてほしい。


2−3 業務種別

 業務種別として考えられるのは、研究開発・材料購入・製造(材料準備・材料加工・溶接・塗装・組み立て)・検査・販売(テレマーケティング)の各部門である。ただし、これは推測である。

 従業員のどの程度の割合がどの業務に従事していたかについてのデータはない。ただ、わずかに、ゲイリー・クラインが社長をつとめ、95年までダリル・ヴォス氏が技術担当(研究開発)副社長であったことだけがわかっている。筆者の全くの推測により、業務種別の人数を割り振ってみると下のようになるが、これには根拠はなく、印象のみによる推測値なので、あくまでも参考程度の認識にとどめて欲しい。

社長 1名  技術担当副社長 1名 研究開発 4名  材料購入 4名 庶務 2名 製造 57名 (材料切り出し 9名・加工 9名・溶接 10名・塗装 10名・組み立て 20名)・検査 6名・販売 4名

【以下次号】


2007/01/29
シェヘイリスとは何だったのか/その1

 すでに2005年のこのサイトのクライン定点観測で、2002年6月5日のクライン・バイシクル・コーポレーションのシェヘイリス工場に関すリアルエステートオークションで、大量の機材・什器類が売りに出されたことを報じたので、ご承知のことと思う。

 2002年2月に、クラインは親会社のトレックの指示により、生産をすべてウィスコンシン州ウォータールーに移したとされており、また、従業員も多くが解雇されたと推測されることから、シェヘイリスで売りに出された機材・什器は、クラインが保有していた機材のほとんど全てである可能性が高いと思われる。

 こうした前提を元に、オークションのデータなどを解析すれば、かつてシェヘイリスにあったクライン工場の全貌が、ある程度明らかになるはずだ。

 工場の存続期間は、1980年頃から、2002年の2月までの約22年である。クラインがウォータールーへ移転したあと、別企業(バイクとは関係がないPioneer Conbeyors社)が使用していた。ただし、2007年1月現在も同社が使用しているかは確認していない。

 2007年1月現在、工場敷地の2/5に相当する20,620平方フィート分が、Lewis County Economic Development Council(ルイス郡経済発展評議会)に所有権が移転しており、工業用地・建物としてリースが可能となっていた。

http://www.lewisedc.com/properties.jsp

 これは、インターネット・リソースという限られた情報源から、かつて輝かしい栄光に包まれていたクラインのシェヘイリス工場を再現する試みなのだ。


Chehalisという固有名詞を、どのようにカタカナで表記するかについては、いろいろ説があったが、喧噪社では「シェヘイリス」と表記する。その根拠は、Steven Sauke氏が米国・カナダ北西部の地名の発音について調査した結果による。そこでは、Chehalisは【sha-HAY-lis】と表現されている。このうち、小文字のa音はアとエの中間音なので、カタカナで表記すると、shaはシェまたはシャ。続いてHAYはヘイ、lisはリス。つまり、シェヘイリスあるいはシャヘイリスとなる。アクセントは、HAYに置かれる。ただし、実際にネイティブスピーカーが発音したものを耳で聞いた場合は、チェハリス/シェヘリスと聞こえることもあるだろう。

http://www.stevensauke.com/say/northwest.html


1 ロケーション


1−1 地勢

 シェヘイリス工場の住所は118 Klein RD. Chehalis, WAであった。シェヘイリス(Chehalis)は、米国西海岸北部のワシントン州(Washington State) ルイス郡(Lewis county)に属する町である。人口は7000人ほどであり、近くにはセントラリア(Centralia)などの小都市が点在している。

 近隣の大都市としては北方にワシントン州の州都シアトル(Seattle)、南にはオレゴンの州都ポートランド(Portland)、北の国境をまたげば、カナダ側のブリティッシュコロンビア州に大都市バンクーバー(Vancouver)がある。シアトルまでは80マイル(132km)ほどの距離にあり、インターステーツ5号線を利用して日常的に移動が可能である。

http://maps.google.com/maps?client=safari&rls=ja-jp&q=chehalis%20wa&ie=UTF-8&oe=UTF-8&sa=N&tab=wl

 シェヘイリスの特徴としては、移民人口が少なく、高齢化が進んでいるため、介護を要する人口割合が州の平均を著しく上回っていることがあげられる。また、犯罪指標は全国平均を若干上回っているが、これらは窃盗や自動車窃盗が多いのが主たる原因であり、殺人などの重大犯罪は比較的少ない。

http://www.city-data.com/city/Chehalis-Washington.html

【以下次号】


2007/01/13

「クラインの軌跡」アップデート

2005年に記述した「クラインの軌跡」を、状況の変化に対応すべく改訂しました。

http://homepage.mac.com/kensosha/kensosha/documents/kleinhistory.html


【旧】【9 2005年現在の状況】

 その後、クラインバイクはウィスコンシン州ウォータールーで生産されている。その後もゲイリー・クラインは社長としての地位を保っている。2005年モデルのサスペンション付きロードバイク・レヴを開発したほか、マーヴェリックからライセンスを購入し、フルサスペンションMTBパロミノを開発している。バイク自体は2002年モデルからは従来の6061アルミに換え、ZR9000というアルミ新素材を投入し、より頑丈に、軽量に、高機能となっているということだ。

 そう、他のメーカーの作るバイクと同じように。クラインは、トレックの戦略下で、高級な塗装をまとった丁寧な溶接を行ったバイクとして、その役割を果たしている。

【新】 【9 2007年現在の状況】

 その後、クラインバイクはウィスコンシン州ウォータールーで生産されてきた。その後もゲイリー・クラインは社長としての地位を保ち、2005年モデルのサスペンション付きロードバイク・レヴを開発したほか、マーヴェリックからライセンスを購入し、フルサスペンションMTBパロミノを開発した。バイク自体は2002年モデルからは従来の6061アルミに換え、ZR9000というアルミ新素材を投入より頑丈に、軽量に、高機能となっているということだ。 そう、他のメーカーの作るバイクと同じように。

 クラインは、トレックの戦略下で、高級な塗装をまとった丁寧な溶接を行ったバイクとして、その役割を果たしてきたのだ。2004年、大手バイク会社パシフィックと、トレック・マーヴェリックが特許を巡って係争したあおりでパロミノの生産を終えるといったトラブルがあったが、こうした穏やかな状況はしばらくの間、続くと思われた。

 しかし、2006年、状況は一変した。10月になっても2007年モデルは米国では発表されることはなかったのだ。例年であれば、9月ころには新型モデルが発表されるはずなのだったが、、、米国での販売は、数か所のディーラーをのぞき、ほぼ終了したのだ(Mtbrのフォーラムメンバーがローカルバイクショップを通じて得た情報による)。これはシェヘイリス工場閉鎖以来の衝撃的なニュースだった。

 しかしまったく同時期、日本のクライン公式サイトでは2007年モデルとして、Q-Eliteというフルカーボンの新型ロードバイクが発表されていた。本国ではなく、日本で。

 この奇妙な現象は、ウォータールーが、クラインの販売を日本を中心としたアジア地域に限定することとしたために起きたことだった。これにより、少なくとも2007年に関しては、クラインはほぼ日本のみで販売されるローカルブランドとなった。今後、こうした状況が変化するかどうかはまったく不明である。


【旧】 【考察(前段最終段落)】

 また、クラインは、最盛期の8年の間に、バイク界に対し、様々な提案を行った。それはアルミによるファットチュービングであり、メンテナンスフリー思想であり、インテグレーテッドヘッドであったわけだ。それらは、現在、ほとんどすべてのバイクやバイクパーツに取り入れられているのだから、その意味ではゲイリー・クラインの勝利だったともいえる。

【新】 【考察(前段最終段落)】

 また、クラインは、最盛期の8年の間に、バイク界に対し、様々な提案を行った。それはアルミによるファットチュービングであり、メンテナンスフリー思想であり、インテグレーテッドヘッドであったわけだ。それらは、現在、ほとんどすべてのバイクやバイクパーツに取り入れられているのだから、その意味ではゲイリー・クラインの勝利だったともいえる。

 さて、2006年の米国販売終了は、ウォータールーにおけるクラインの役割がある程度は終わったことを示しているといえるだろう。今や、クラインがトレックに利益をもたらすことはないということだ。米国ではトレック傘下のディーラー網を維持するほどの利益も得られなくなった。おそらく、ハイエンドのバイクはカーボンかチタンが主流になったことが大きく影響しているのだろう。カーボンバイク全盛時代になり、基本的にカーボンバイクを作る技術のなかったクラインは、次第にお荷物的な存在になっていったのだ。ウォータールーはペイントのノウハウを吸収した後、クラインのカスタムペイントも廃止している。グレーディエント・バテットの技術も、カーボン時代には無用のものになったのだ。

 ウォータールーは、今後、クライン部門をどのように扱うのか。米国での復活はあり得るのか。

 2007年1月現在、弊社が情報を得ることはできていない。

 クラインのその後の運命を暗示していたかのように、米国版のカタログや米国版ウェブサイトには、2005年後半以降、Gary Kleinという創業者の名前は掲載されてはいない。


【旧】 【考察(後段最終段落)】

 主宰としては、トレック傘下にあっても、ふたたびクラインが、「他のバイクと同じく高機能なバイク」ではなく、「他の追随を許さない、独特かつ高機能なバイク」を作るメーカーとなることを望んでいる。

 そして、ゲイリー・クラインに、あの8年間のような、才能と幸運がともに訪れる時期が、ふたたびやってくることを望むことにして、この稿を終わることにしよう。

【新】 【考察(後段最終段落)】

 主宰としては、ふたたびクラインが、「他のバイクと同じく高機能なバイク」ではなく、「他の追随を許さない、独特かつ高機能なバイク」を作るメーカーとなることを望んでいる。もし、将来、クラインのブランドが売りに出されることがあるとしたら、そこが復活のチャンスといえる。

 ゲイリー・クラインが、自らの裁量で理想のバイクを作ることを指揮する、そんな体制が復活する、、、そして、彼に、あの8年間のような、才能と幸運がともに訪れる時期が、ふたたびやってくることを夢見て、この稿を終わることにしよう。


2007/01/07

新春放談2007(後編)


【リンスキーさんの話】

B:リンスキー氏は家族経営でライトスピード社を興したのだが、結局、別の企業へ売却したのです。

A:へえー。どっかで聞いた話だ。

B:その後、しばらくバイクビジネスから遠ざかっていたのですが、リンスキー氏は最近、自らの名前を冠したブランド「リンスキー」を興し、ふたたび自分が理想と考えるチタンバイクを作るようになった、、、

A:いい話だなあー。理想のバイクか!それだよ!お金儲け、結構。リストラ、結構。企業買収、結構。でも、一番重要なのは、「理想のバイク」を作ることだよ。そして、理想のバイクを作ることができるのは、ゲイリー・クラインたち、限られた人々なんだ。けっして、銀行屋とか投資会社ではない、、と、思う。

B:求む、ゲイリー復活、ということですか。

A:そういえば、ちょっと前、あるカメラメーカーの株式を大量に保有している投資会社が、かつて「カメラ事業から撤退すべきだ」と「もの申す株主」として米国の新聞などで発言していたんだよ。

B:儲からないならやめちまえ、ってことですかね。

A:どこのカメラメーカーとはいわんがね。やめられるとユーザーは困るんだよ!経営方針が気に入らなかったら株を売ればいいんじゃねーの?株主は投資しただけで、べつに会社を所有している訳じゃないだろがよ。

B:ウォータールーも、応援だけしてくれればよかったのにね。

A:いまから2001年11月(シェヘイリス閉鎖決定時点)まで時間をさかのぼらせることは、エイリアン以外にはできないよ!リマーッ!

B:どうやら落胆しているようですな。よくわからんけど。


【今後の活動】

B:ところで、最近のバイク事情はどうです?

A:オレの身の回りのことかい?最近、トレイルライド系に移行しつつあるんだよ。もちろん、XCレースには出てますがね。

B:来年は40歳の大台ですね。

A:そう。一般クラスのカテゴリーが移動するんだよね。はたしてそれがどう作用するか。わからぬ。、、、、こんなオレでも40歳になるもんだ。25歳になったときもショックだったが、40歳といえば、きんどーさんと同じ年齢だよ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/マカロニほうれん荘

B:やってることはきんどーさんとあまり変わらないですけどね。

A:うひょひょひょひょ、、、、と、まあ、笑ってみる。

B:トレイルライドではいくつかトレイルを発見したようですな。

A:そう。有望なヤツだ。くわしくはここを。

http://homepage.mac.com/kensosha/kensosha/documents/trailrecon/trailreconTOP.html

 相変わらずフルリジッドのアティチュードでトレイル探索をするわけだが、下りがメインの場合に使う、フルサスペンション・バイクが欲しくてね。

B:以前、パロミノを買おうとしてましたね。断念したけど。

A:そう。パロミノを見つけることは難しいぜ、、、オークションにも出てなくてね。それで、やむをえずマウンテンサイクル社のZENというフリーライドバイクを買おうとしたんだが、、、

B:マウンテンサイクルもぶっつぶれてしまいましたね。

A:人聞き悪いなー。再度売りに出されただけだよ。現在、再建中ね。もとFSAの社長がイクイティ・パートナーになってね。がんばってるみたい。でも、まだマウンテンサイクルの本格的復活は遠いようだ。

B:買おうとするバイクがすべて消滅していくというのはどういうことでしょうね。

A:おそらく、クラインの呪いだろうね。

B:本当かよ、、、

A:そこで、現在候補に挙がっているのが、マングースのCanaanか、コメンサルのMetaか、ジャイアントのTranceといったところだ。この3社ならたとえクラインの呪いがあっても、経営的に当面は安泰だろう(マングースはPacific Cycleの傘下)。バイク自体もフリーライドに耐えられるだろうし。

B:いよいよクライン以外のバイクに乗るのですね。

A:いや、オレはクラインバカになった以降でも、GTのフルサスバイク(LTS)にも乗ってたよ。ほら、、10年くらい前は、みんなあった体験だろ? DHバイクが欲しくなる病。

http://www.mtbr.com/reviews/Bike/product_18687.shtml

B:そんな病は聞いたことねーよ。

A:流行ってたんだよ。いわば流行病だ。で、その当時は置く場所がなくて結局手放しちゃったけどね。オークションで兵庫の女の子にもらわれていったよ。いまごろどうなっているのだろうか?

B:今後のバイク運用はどういう風にするのですか。

A:そうだなー、XCレースにはファーバー・アティチュード、トレイル探索にはアティチュード・フルサスバイク、フリーライド・マラソンライドにはフルサスバイクといったところだろうか。

B:それが白いパロミノだったら弊社にとって美しい話なんですがね。

A:まったく残念だよ。


【明るい話題はどこだ】

B:クラインにとって明るい話はないんですかね?

A:そうだなー、相変わらずオールドクラインはネット上で頻繁に取引されているようだ。オレの知り合いも2台目のオールドクラインを買っちゃったし。

B:2台!気合い入ってますね。次々とそうやってみんな泥沼へ足を踏み入れるわけですね。

A:その人が言うには、オールドクライン自体は尋常じゃない耐久性があるので、オールドクラインをいじって楽しむ趣味は、VWビートルをいじるのと同じでずっと存続するのでは、ということだ。

B:部品もある程度は供給されてますしね。

A:情報を交換し合う小さなコミュニティという感じかね。楽しいよ。この泥沼は。

B:われわれは泥沼に好んで生息する肺魚的な存在なんですかね、、、

A:肺魚かよ、、、生きた化石ってわけか。ちょっと納得。

http://ja.wikipedia.org/wiki/ハイギョ

B:ともかく、その小さなコミュニティを維持していけばいいわけですね。

A:オールドクラインを買うときの注意点をもう一度言っておくよ。バイクのサイズ、クラック、へこみ、傷に十分注意を払って欲しい。塗装の退色は必ずあるので、あまり気にしなくてもいい。塗り直せばいいんでね。

あと、BBはMCインターナショナル経由でResetのを取り寄せ、交換してくだちゃい。これで万全だ。そして、思う存分乗れよ!(アニキトーク)

B:それがいいたかったのですね。

A:喧噪社は死蔵されていたり、捨てられそうなオールドクラインを救いだすことを目的に作ったサイトだしね。

B:ええっ?本当ですか?

A:うん、、、いま考えたんだけど。

B:でも、いまとなっては間違ってはいませんね。

A:まあ、そんなわけで2007年もオールドクラインの素晴らしさを世界に広げていこうと思う。最近は外国の人からもメールが来るし。

B:へえー。

A:直近のは英国からだったなー。よかったー、英語ページをつくっといて。あっ、そういえば、1年ほど前に、あの英語ページを読んで、知らない人(帰国子女の人)が「あなたの書いた英語は、典型的な日本人英語学習者の英語なので、興味がある」っていうメールをくれたよ。なんでも、発想や文法、語彙すべてがそうらしいよ。最初は「大きなお世話だ!」と思ったんだけど、自分の実力を客観的に評価してもらって、いまは逆に感謝してる。ネイティブのような英語は書けないってことがわかったよ。

B:まだまだ勉強が必要、ってことですかね。

A:今年は英語を再勉強してみようと思っているんだ。

B:新年にふさわしい目標ですね。バイクとは何の関係もないけど。三日坊主にならないようにしてください。

A:あっと、2007年は大型連載企画、「シェヘイリスとは何だったのか(仮題)」を予定しているよ。お楽しみに。

B:そうでした。現在鋭意執筆中でしたね。

A:では、締めも新年らしく、終わろうか。では、2007年もよろしくお願い申し上げます。


2007/01/01

新春放談2007(前編)

毎年恒例ですが、1人の記者が書くヤラセの「記者座談会」形式で、今後のクラインを占ってみたいと思う。なお、これは新春放談。放談なので、好き勝手に書いたものです。これを読む際の注意としては、度量の浩瀚さをもって旨とせよ、ということでしょうな。

では、ごらんいただきたいと思います。

部分的には、ムッとする方もおられるかもしれませんが、新年のおめでたさに免じて許していただきたい。

と き  2007年1月1日
ところ  喧噪社本社防空指揮所
主宰A クラインの過去と未来を追跡する恒点観測員。
主宰B 主宰のもう一つの人格。控えめなツッコミを信条とする。


【この1年の動向】

A:この番組は「自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」をモットーに世界に躍進する、東京通信工業の提供でお送りいたします。

B:ウソです。読者の皆さん、本気にしないでください。

A:さあ、この1年の動向だろ?話せばいいんだろう?話せばぁ!

B:投げやりですね、年始めだってのに。

A:そりゃー投げやりにもなるさ。もう言うまでもないかな?クラインの本国ウェブサイトの件については。

B:一応、言及してください。

A:全然更新されてねーんだよ!1年以上も。どういうことだよ!(怒)

B:分析するとアレですね、ウォータールーはもう米国でクラインを売る気はさらさら無い、ということですかね。

A:すくなくとも日本以外ではな。日本のウェブサイトは更新されている。これに対し、米国のサイトは更新されていない。また、もう米国ではクラインは通常ルートでは売られていないということが米国のフォーラムで言及されている。

B:ディーラーは数軒あるようですが、それ以外は特別注文というあつかいらしいですね。

A:クラインは事実上、日本を中心としたアジア圏の一部でしか売られていないらしいんだよな。これが何を意味するかわかるかい?

B:つまり、、、米国ではクラインは儲からないバイクになった、ということでしょうか。

A:そう。顧客の減少、シュリンケージという現象だ。

B:何でこんなことになったんでしょうかね。

A:だからさー、ウォータールーの判断ミスだっつーの!もっと早くロードバイクとフルサスペンションバイクをテコ入れすべきだったのに、それを怠った。あと、クラインが提供できるものはすべてトレックが提供できるようになったからね。トレックグループ内のクラインの位置づけ自体が、非常に不安定なものになったのだろう。

B:やはりトレックの思惑は技術の吸収だったんですかね。

A:結果的にはそうだった、といわれてもおかしくない。カスタムカラーのノウハウや、アルミチューブの加工法とかを吸収した後は不要になった、とね。実際にはそんつもりはなく、クラインのブランド構築に失敗したということかもしれないのだが。

B:ビジネスの世界は厳しいなー。買収というものは諸刃の剣であって、クラインにとってもトレックにとってもあまりよい結果はもたらさなかったわけだ。

A:悲しいけど、これ現実なのよね。

【新型モデル】

B:さて、ほぼ日本でのみ販売されるという、クラインの2007年モデルはどうです?

A:ほとんどが継続モデルだが、Q-eliteだけは新型モデルだ。

B:フルカーボンのロードバイクですね。クライン初の。

A:そう。カーボンマントラはメインチューブだけがカーボンだった。最近のQシリーズはカーボンバック(シートチューブとFフォークだけがカーボン)だったね。今回のロードバイクはすべてのチューブがカーボンだ。いまは情報が少なすぎて、このバイクがどこで生産されているのかはまったくわからん。

B:ゲイリー・クラインが率先してフルカーボンバイクを作るとは思えませんが、、、

A:いや、かつてカーボンバーを自ら開発したことがあるので、可能性はあるだろう。だが、もはやシェヘイリス工場はなく、ウォータールーの工場あるいは台湾企業のOEMなのだろう。ゲイリー・クラインの関与度合いがどのくらいなのかはわからないのが問題だ。


【3つのシナリオ】

B:2005年にパロミノを消滅させたのがなにかの兆候だったのでしょうか。

A:そうかもね。なんとかの始まり、というヤツだ。

B:でも、日本ではクラインは売れているんでしょう?

A:そう言われている。高級バイクだから絶対量はそれほどはないだろうがね。

B:今後、クラインはどうなっていくんでしょうか?

A:ウォータールーがクラインを今後どう扱うのかを考えればいいだろう。シナリオはいくつかある。

まず、シナリオ1。これはウォータールーがクラインのブランドを放棄するというものだ。再度、どこかへ売却するわけ。

次に、シナリオ2。ウォータールーは、当分、クラインを日本を中心としたアジア圏でのみ販売する。

最後にシナリオ3。ウォータールーは、2007年の日本での販売動向を詳細に分析し、戦略を再構築した上で、2008年以降、全世界でのクラインの販売を復活させる。

このうち、もっとも可能性の高いと思われるのは、シナリオ2だろう。しかし、、、

B:しかし?

A:オレはシナリオ1のように事態が進行するかもしれん、と思っているよ。

B:なぜです?

A:Wikipediaの米国版、2006年12月16日バージョンからの抜粋だ。

There is widespread speculation over whether Trek plans to continue supporting Klein, or whether the company has plans to discontinue it altogether. In recent years Gary Klein's role in the design of Klein Bikes appears to be minimal.

「トレックがクライン部門を維持し続けるか、クライン部門を廃止するか、いずれにせよトレックにとっては過大な投資となるだろうと囁かれている。ここ数年、ゲイリー・クラインがクラインのバイクデザインに関与する役割は著しく少なくなっているようだ。」

B:うわー。

A:前段に注目して欲しいね。この記述が正しければ、の話だが、ウォータールーはいずれクラインを廃止するかもしれない。長いあいだわずかでも損を出して出血するよりも、特別損失を出して、解消するべきなのだ。

B:対症療法をやめ、外科的手術のような根本的な解決手法で出血を止めるわけですね。

A:ただし、それは日本でクラインが売れなければ、の話だ。日本で売れれば、当面の利益を確保するために、クラインは存続するかもしれない。日本限定ブランドとしてね。

B:我々としてはどちらが好ましいですかね。

A:何ともいえんね。ダブルバインド状態だよな。簡単に言うと、どっちもよくない気がする。日本だけで売られてもなー。そもそも、アイツはどこに行ったんだよブラザー!!(怒)

B:アイツってだれですか?

A:ゲイリー・クラインだよ!、、、アイツさえ、、、アイツさえ、、、(怒)

B:ま、まあ、落ち着いて、、、

A:シナリオ1で、どこか別の会社にクラインの商標が売却され、ゲイリーの身柄もそこで引き取られるとかだったらまだ希望はあるがね。

B:ゲイリー自身がブランドを買い戻すとかね。

A:それが理想だが、、、まず無理だろう。工場ないし。ともかくアイツさえ戻れば求心力も復活するだろうに、、、

B:去年の時点でも、ゲイリーがすっかりやる気をなくしているのでは、、という分析でしたね。

A:ますますヤツの情報は出てこないよ。ウェブ上で出てくるのは同姓同名の心理学者や釣り師のウェブサイトばかりだ。おっと、この釣り師というのはリアル釣り師だよ。魚紳さんみたいなヤツかな?、、魚紳さんのベストはどこで売ってるのかな?

B:脱線しそうです、、、そうそう、先日、Bicyclingという雑誌で読んだんですが、ライトスピードの創業者のリンスキー氏の記事があったんですよ。

A:ほほう。

(意外な引きで、次号につづく)


こんなニュースがあるよ! というメールはこっちへ!  喧噪社 
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