KLEIN Fervor 1994(KLEIN USA) 近代化改修
#18-8 BBの圧入
BBシェルが空になったので、いよいよReset Hollowtech II BBを装着しよう。空いているクラインのBBシェルには、はやいとこなにかを嵌めないと妖怪が入り込んでしまうという伝説がある(ウソ)。
実際のオレはカゼのためふらふらではあるが、車にバイク、専用工具一式などを積んで、なじみのバイク屋に向かった。店長からヘッド圧入工具を貸してもらい、圧入を手伝ってもらうためである。
さっそくバイクをワークスタンドにセットし、BBとヘッド用の圧入工具をあててみる。
息を飲む一瞬
予想していたとおり、そのままでは圧入工具がベアリング部分を押してしまう。これではまずいわけだ。
そこで、店長が奥から出してきたChris Kingヘッドセット用のアダプターを介すると、、、ベアリングの外側の本体部分にぴったりだ。そう、、、まるであつらえたみたいに。これでいいはず。すべてはResetの説明書通りだ。
ロックタイトを開封し、シェル内部にごく少量塗る。さて、、いよいよ圧入開始。店長がウイングナットをもち、オレが反対側のナットをモンキーレンチで固定する。ウイングナットを回して締めていくと、手ではけっして入らなかったReset Hollowtech II BBが、ぐぐっとシェルに入ってく。これ!この精密感がたまらない。
そして、がっちり最後まで入った。うう、、、、感激だ。この状態でBBを手で回そうとしても、まったく動かない。やったね。
あまったロックタイトを拭き取り、工具の借り賃を払って、早々に辞す。
家に戻ったところで、オレのカゼが悪化。うおお、、、しかし、ロックタイトには養生時間が必要であろう。バイクはひっくり返して保管し、オレも風邪薬を飲んで養生することにしました。今年のカゼはひどいね。
養生中
さて、翌日の日曜日。体調も好転したので、家でディレーラーの設定といこう。圧入から20時間が経過しているので、実用強度には到達しているはず。様子をうかがうと、BBはロックタイトでかっちり接着されているようだ。すげーなー、テクノロジー。シェル内にまだ垂れている余ったロックタイトを拭き取っておく。
しかし、ここで問題が。再度ノギスで何か所か計測してみると、BBを含めたシェル幅が98.5mmになってしまっている。おそらく、BBシェルのフェイスがわずかにゆがんでいたせいだろう。これはResetの「基準2」を1mmオーバーする。しまった、、、やはりシェルをフェイスカットすべきだったか。
ままよ、、、このままやるしかあるまい。まず、クランクを取り付ける。意外なほど簡単に装着可能。問題はここからだ。
たった1ミリに苦しむことになる
ディレーラー位置をコンパクトクランク用に変えてシフトワイヤを張り直す。で、アウターに変速しようとシフトレバーを動かしてもうまくいかない。むう、、、変速プレートがアウターの変速位置まで到達しないのだ。
、、、そう、、あと、たった1mmほどなんだが。
しまった、、、これがあのオーバーした1mm分なのかーッ!なんてわかりやすい、、、これをなんとかしないと、永遠にアウターに変速できないんだ。ふごうっ!
何度かディレーラーの上下位置を変えて試したが、動かず。もはやこれまで、、、?いや、ここあきらめたらすべては水泡に帰す。ここであきらめたら世のオールドクライン好きたちが失望するだろう。あるいは現代バイク乗りたちの冷笑が。
「なんだ、結局つかえないんじゃんw」
「やっぱり15年前のバイクなんてダメだね」
「いまのバイクのほうがいいにきまってる」
「やっぱり床の間(ry」
、、、、ネガティブな妄想がどんどん頭に浮かんでくる。ぐわーッ!
そこでひらめいたのが、RaceFaceクランクに付属しているスペーサーのことだ。チェーンリング側に、厚さ1mmのプラスチック製スペーサーがはまっているのだが、これをはずせば1mm縮まらないか?まさにぎりぎりの駆け引き。
、、、スペーサーを外したところ、果たしてアウターに変速するようになった。うおー、、、よかった、、、RaceFaceがスペーサーを多用していて助かった。
あとはリアディレーラも調整して、ドライブトレインの整備は終了。薄氷を踏むような勝利であった。
「友情・努力・勝利」という単純モデルによるプロセスではなく「現物合わせ・運・勝利」という、より現実モデルに近いプロセスで得たものだろう。なんちて。
さて、今後、Reset Hollowtech II BBを入れようとしている方に対して一言。
今回、オレはBBフェイスカットによるシェル幅調整をしなかった。これは、たまたまうまくいったまでのことで、本来はフェイスカットして、Resetの指定する基準内にシェル幅を収めるべきだと思う。でないと、オレのようにFディレーラの調整で四苦八苦することになる。あるいは、永遠にアウターチェーンリングに変速できないとか。
実際、オレのAttitudeのシェル幅は75.3mmあり、Fervorより0.8mm以上は太くなる。これはいかにスペーサーで調整しようとも無理だろう。
フェイスカットの方法は、フェイスカット工具などをじっくり検討してみなければわからない。もし、フェイスカットのいい方法があったら教えてください。機械加工の専門家に聞けば分かりそうだが、、、どうだろうね。正直わからん。ヘッドチューブのフェイスカットをするためのリーマーを使えば可能だろうか、、、無理だろうか。ヘッドチューブリーマーは高価なのでおいそれと試すことも出来ない。
しかしまあ、BBの取り外し・圧入についてはオレ的な画期となった。いままでは、実践もせずにオールドクラインについて偉そうなことを書き散らしていた。極端に言えばね。でも、ここでようやくオールドクラインの核となる部分に手を付け、成功することができたわけだ。
【おことわり】さて、ここでお断りをしておこう。
このウェブサイトを読んで、オレに「オールドクラインのBBを外して(あるいは入れて)ほしいのですが、、、」というメールを出そうと思ってる方がいるかもしれない。お気持ちは十分わかりますよ。近所のショップでは、やってくれないでしょうからね。
でも、オレは、自分のバイクを自分の責任でいじることしか出来ないのです。他人さまのバイクをいじり回すなんてことは、絶対に無理だ。そして、もしそれをやったために貴重なバイクを壊したりしたらどうなるか?、、、、償いようがない。今回は自分のバイクなので好き放題にできただけです。
バイク修理を商売にしているのならやるかもしれませんが、オレの本職は単なる勤め人。他人さまのバイクにはまったく責任を持ちかねる。
オールドクラインのセッティングを行っているバイクショップが何店かありますので、そちらにご相談いただくのがいいかと思います。
と、あらかじめお断りしておきますのでよろしくお願いします。